semai92117’s diary

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元祖 乗り鉄 内田百閒

阿房列車」に初めて巡り合ったのは、もう50年程昔の事。以来何度も何度も繰り返して、今でも読んでいて全く飽きない。殆どの記述を覚えてしまっているのだが、読む度に新鮮な気持ちがして、新たな発見もある。

著者内田百閒氏が随筆の天才と異名を取る所以であろうと思う。

つい先日起こった熊本大震災の災禍に接して、氏の「雷九州阿房列車」を改めて読んでみた。最近では天気予報などで気軽?に「50年に一度あるか無いか」と言われるほど異常気象現象が頻発するが、昭和20年代当時で60何年来と言う梅雨時特有の集中豪雨の真っ只中を旅する事になった紀行文には、熊本特有の火山灰土の事や白川の大氾濫が記録されていて、この地方の防災対策の留意事項が垣間見える。

他方で、高速化され移動手段でしか無くなった鉄道旅で既に失われた食堂車の楽しみや車中泊の事、終戦直後の社会の様子など、私が生まれる直前の情勢が分る本としても、興味は尽きなかった。

用事もないのに、借金をして大阪まで1等の特急で出掛けて、帰りは帰宅する用事があるから、3等で我慢して帰ってくる。と言う発想のユニークさ。当初は随筆のネタとしてでは無く、純粋に鉄旅を楽しみたいと言う思いが伝わり共感を覚える。3刊ある。

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