長万部
長万部は、昔お笑いタレントが妙なアクセントと下品な振りでネタにして有名になったけれど、観光客は殆ど居ない町だ。近傍に惹きつける観光地が無いからだ。しかし、鉄道で北海道を訪れる人は必ず通る駅でもある。
1928年に東室蘭で北海道炭礦が室蘭と岩見沢間で石炭積出し用に敷設した路線を国が買収した室蘭本線と接続する迄は函館本線の駅だった。
小樽周りの函館本線に較べて急坂や曲線が少ない事や石炭、木材、農作物等の産地からの輸送には最適の路線で、函館本線に代わって人貨共に大動脈になった。
その分岐点に当たる長万部は、蒸気機関車撮りに出掛けた私には重要な撮影場所だった。何しろ函館から長大な貨物列車が頻繁に来る、そして函館本線と室蘭本線からも来て、頻繁に出入りし、その間を方向別に貨車を仕分けする入れ替え作業が昼夜行われている活気ある駅だった。
駅はそんな活気に満ち溢れていたが、観光客の殆ど居ない町は静かだ。
町の東側海沿いには広大な原野が広がって、草樹も少ない荒野は冬は全くの墨絵の世界だった。それでも、当時は瀬棚、寿都、岩内等、日本海に面する寒村へ枝線があったので、それなりの乗り換え客がいたけれど、全て廃線になり車社会に変わった現代では、更に静かな町になっているだろうと思う。
人の出入りが少ない町には、昔の文化が変わらずに現代に続いている事が多い。
素の北海道の町の暮らしを知るには最適な町の一つだろう。
地元の住人の意思に反するとは思いつつも、変わらずに残って欲しいと思う町の一つだ。
路線図の配置に各路線の性格が出ている
函館から長い貨物列車が到着した