上目名
上目名は函館本線の長万部から小樽方面へ5目の駅。数は5つでも距離は35キロもある山間の列車交換施設。狭隘な山間地に少しだけ開けた場所にある。
駅は本来は乗客が乗降する場所だけど、ここは上下列車の行き違いの為の場所だから、周りに人家は全く視界に無く山林ばかり。私が訪れた冬季には、熊は既に冬眠してるから安心だが、そうでなければ怖くて列車の写真なぞ撮っていられる場所ではない。
それでも、一応乗降の為のホームがあるから、客が皆無ではないだろうし、正式に駅として時刻表にも記載されてるから、北海道に無数にあった簡易乗降場とは違う。
小樽方に雪よけのスノーシェッドがあって、線路際を歩けないので山登りしてシェッドの上を通過して斜面に張り付くように三脚を構えて列車の通過を待つ。
真冬の北海道だから、幾ら若くても東京育ちには相当厳しい寒さだった。
やがて時間になると、遙か遠方に煙が蛇のようにくねりながら登ってくるのが見える。音は聞こえない。今迄見た蒸気の煙は上空に吹きあげて大きく拡散するのだが、ここでは山林の間をくねるように見える。
やがて、ジェット機が遥か上空を飛んでるような連続した爆音とともに時速80キロ近くの非常な高速で走る塊があっという間に目の前を通過して視界から消えてゆく。
それまでの経験を超えた圧倒的な迫力で過ぎ去り、何事も無かったような静寂に戻る。
初めての時はただ呆然と、と言うか呆気にとられた。そして強烈な印象が焼き付いた。
それが、函館行急行ニセコの撮影の記憶である。
国鉄最大の機関車C62が重連で爆走と言う表現が正にぴったりの走行風景だった。
上目名にて 急行宗谷が交換待ち運転停車
函館行 急行ニセコ